2011年11月3日木曜日

CGWORLD 2011 -クリエイティブ カンファレンス- (2011/10/23) のまとめ 1

「CGWORLD2011 クリエイティブ カンファレンス」のセッションレビュー

カンファレンス詳細 : http://www.borndigital.co.jp/seminar/detail.php?id=221


複数の会議室で行われたカンファレンスを、全部で4コマ受講してきましたので、それを複数回に分けてレビューしていきます。淡々と思ったことをつらつらです。

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株式会社クオリス 12:30-13:30
講演タイトル:創造性と生産性を両立させる環境とは
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会社HP : http://www.qualice.co.jp/

■クオリスの業務履歴の話を色々
12:30から30分ほどこんな話。
この会社は立ち上げ当初ゲームプラットフォームやXSIやSI3Dのプラグイン開発、最適化システム
構築などをしていたそうです。XSIの初期APIについて先進性と扱いにくさは際立ってましたね、とか
話していました。
大半は退屈でしたが、ゲーム会社向けのシステム開発で一点だけ気になった話を。
どこかの会社向けのシステム構築で、SI3Dから.maを出力してRIGをMAYA上で完璧に再構成でき
たそうです。もったいないので是非SoftImage用に移植してください。
他にはアミューズメント向けのミドルウェアの調査運用コンサルするなどしているそうで、セミナーの
スポンサーだと思うので生暖かい目で見てますが、30分は使い過ぎです抑えめでお願いします。

■CGG制作環境の変化について
ここから10分ほど、1980年-現代までのエンタメ分野の略歴話をしていました。1980年のパックマン
から始まってファミコン、アーケードの話。I'ROBOTでゲームに初めての3が使われ、バーチャファイ
ターで爆発、2005年あたりから開発競争が落ち着いてきて云々と、そんな話でした。確かにその通
りですと懐古。

■3D制作環境の変遷
やっと本題です。残り30分ほど

2Dが3Dに移り変わるまでをそれぞれの表現技法を絡めて話ていました。とりあえずまとめると、

2Dドット絵でゲーム開発していた頃は、表現の限界が明確でピクセルに対して1対1に限りなく近く、
ゲーム要素の一部として機能していたため、アートがゲーム開発の行程に含まれることはスーファ
ミ開発の終盤に近くなるまで殆ど無かった。
3Dがゲーム表現として研究されるようになり、アート表現自体がゲームの開発工程に組み込まれ、
開発工数が増大した。またゲーム自体がアート重視になり、表現要求が高まっていった。
3Dゲーム初期から続いていたアート重視が市場に受け入れられると、それに篇什するようになり、
開発工程のボトルネックとなった。それらを改善するため、2004年頃から描画部分についてミドル
ウェアや社内のR&Dをたちあげる会社が増えた。

とこんな感じ。PS-PS3開発当初までの、日本の開発者から見た時系列的な感想は確かにこのよう
なものだったでしょう。

コレを踏まえ、現状の問題点と原因究明、どこを重点的に考えるか、へと話が移りました。
以下ものっそい長いですが、色々頷く点もあると思いましたので、講演内容をほぼそのまま羅列していきます。

3Dの黎明期から現在に至るまで、この分野の技術体系はハリウッドと主に発展し、その恩恵を全世
界が受ける形になっている。
ハリウッドは必然的にそのお膝元であるアメリカゲーム業界の技術発展を支え、初期はゲームの開
発資金投資やシナリオの着想点など恩恵を与えた。

最近は、PC性能の飛躍的増大という環境変化を受けており、ゲームと映画がお互いにフィードバッ
クする関係に発展し、影響を与え合う地盤ができている。

ハリウッドでは実写作品へのCG投入が盛んな為、実際にはないモノを如何に違和感なく合成できる
かを長年研究しており、その中で映像技法が非常に進化、その流れは今後も続いてくだろう。

CGアニメはキャラクターデザイン自体がはじめから3Dで有ることを意識しており、実写映画での考
え方や技法がそのまま使用できる強みがある。

またアメリカはPCゲームが主流であり、基板の進化が早い為、技術革新サイクルが早い。リッチな
チップの上で潤沢な表現を追求するといった方面に技術が進みやすい側面がある。現在の技術ト
レンドと非常にマッチした環境にある。

一方、日本では実写映画ではなくアニメとゲームがそこを担う立場にいるが、コンシューマー基板が
技術発展の基本になっている為、ハード限定の技術、特殊な環境での速度稼ぎなど技術が泡沫的
になりやすい面がある。そのような部分に長年コストを割いたため、現在ではアメリカに遅れをとっ
ているまた、映像表現としてのアニメはマンガ原作が多くキャラクターが基本2Dを意識した造形で
あるため、3DCGとの親和を深めるためには非常にコストがかかる。マンガアニメは職人の感に頼っ
た技法が多く技術革新のサイクルが遅い面がある。 

国内では、現在デジタルサイネージやカーナビ、アミューズメントの業界でムービーだけでなく3Dチッ
プが入り始めている。組み込み型のチップであるために、コンシューマ機家庭用と同じ問題を抱える可能性が高い。

そういった現状を解決しようと現在とられている手法の多くは、ミドルウェアの採用、高性能PC・レン
ダーファーム・人的リソースの導入、ワーク フローの改善ツールの導入などに終始し根本的な原因
に迫っていない。

ミドルウェアの問題点は汎用・生産性の向上が主なターゲットになっているため、ゲームアートの独
自性や品質と矛盾しやすくなり、消費者の目線で見たときに表現に差がない、特に代わり映えのし
ない同じようなものが生産される危険性がある。

また、ミドルウェアの価格はエンジニアの雇用や技術習得費用と比較し本当に安価か疑問である。

ミドルウェアの導入は社内での技術蓄積を諦め、表現の革新・斬新さを諦めることになる。
プロジェクト導入前に表現技法の特性の確認、プラグインなどが開発工程内で十分活用できるか、
生産性とのトレードオフを検証する必要がある。

といって、Unityなどは表現も多様になっているので、常に最新の情報を集めて情報をバージョンアッ
プし、プロジェクト開始前に、このミドルウェアが本当に必要なものかどうか徹底的にリサーチするこ
とが重要である。

コスパのみを課題にすると足元を救われる可能性があり、レンダーファームやワークフローツール
によって行程がどの程度効率的になるかを考えること。

当たり前だが、アメリカ発のツールはアメリカの開発工程で必要な考え方でつくられている。人的リ
ソース導入についても現場担当者の努力は、一時的な負荷分散にすぎない。

良いPCを三台入れても、人のパフォーマンスは三倍にはならない。

ゲーム・映像の現場が本当に望んでいるのは、製作者が十分に実力を発揮できる納期の中で最終
的に画作りに妥協しなくてよい制作環境とそれを的確に評価する、ということであり、そこに向かうこ
とを一番に考える仕組みである。そのためにはパフォーマンスの最適化、作業の増大といった問題
を変える努力が必要である。

現在の日本では、アメリカのように製作者の作業環境をバックアップする態勢を整え、それ専門の
研究会社を作るなどの、莫大なコストをかけることが難しい状況にある。画作りに直結しない部分を
重視しない風潮が一番変えるべき問題である。

付き合いのある会社に聞いてまわると、それはわかっているが、と言う。認識はしているがそこに手
を付けられないでいる現状がある。

アメリカと同じ制作環境整備は難しいし、単なる後追いをやっても環境の違いで役に立たない可能
性がある。

アーティストとエンジニアがどう協調するのかが課題であり、それらを結ぶ人材、つまりテクニカル
アーティストやそれを支える組織づくりが必要である。

と、こんな感じでした。確かに日本のエンタメ業界がどこでも抱えてる問題を、よく表現していると思
います。改善点もその方向性で間違っていないように思いますし、各社がそれをわかっていながら
手をこまねいている状況もそのとおりだと思います。


あとの残り10分はこの会社の宣伝でした。誰かクオリアをよろしくお願いします。


--個人的なまとめ--

現状認識や改善点などについて頷く処が多く、問題をきちんと認識してその対処をしましょうといっ
た内容には深く頷きました。

また、それらの問題を改善するためにクオリアを利用してみてはどうですか。といった売り込みにつ
なげる流れは感じ取れました。

ミドルウェアを使った、というか現世代のピクセルシェーダー体系を使った画作りについては、BF3な
どの一部を除けば、確かにどれも似たようなものになっていると思います。
そうした状況を打破してトップを取るといったことについては上記の方法ではもうどうしょうもないの
で、あえて深く突っ込まなかったきがします死なないために次善の策を、と言った内容でした。

問題を整理して、自分のプロジェクトで意識的に改善するのにとても良い講演だったと思います。

ありがとうございました。

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